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福島地方裁判所 昭和31年(ワ)12号 判決

原告

加藤五男

被告

古山春代

外一名

主文

一、被告古山寿一は原告に対し金一四万四〇〇七円を支払え。

二、原告の同被告に対するその余の請求及び被告古山春代に対する請求を棄却する。

三、訴訟費用は原告と被告古山春代との間においては原告の負担とし、原告と被告古山寿一との間においては、原告について生じた費用を二分し、その一を同被告の負担とし、その余の費用は各自負担とする。

事実

(省略)

理由

証人加藤義勝の証言により真正に成立したものと認める甲第一号証の一ないし一九、第二号証の一ないし七、第三号証の一ないし八、証人加藤義勝、宍戸仙太郎の各証言、被告寿一本人尋問の結果に弁論の全趣旨を綜合すれば、被告寿一は昭和三〇年四月二日夜福島県信夫郡飯坂町明神神社附近道路上において些細のことから原告と口論した上原告の右胸部を短刀で突き刺し、(同被告が短刀で原告を突き刺したことは当事者間に争がない。)原告に右胸壁刺創及び肺臓損傷を負わせ、このため原告は右同日から同年一〇月三〇日まで福島医科大学附属病院に入院加療し、その間入院治療費として金七万二七九二円、そのほか傷害部の化膿防止のため使用した注射薬サイクリンの代金として金七二五〇円、同内服薬アイロタイシンの代金として金六八〇五円、附添看護婦の料金として金五万七一六〇円、合計金一四万四〇〇七円を支払い、右同額の損害を蒙つたことが認められる。以上の損害は被告寿一の不法行為により通常生ずべき損害であるから、同被告は原告に対し損害賠償として右金員を支払うべき義務のあることが明かである。

原告は、右入院期間中父の家業である農業の手伝ができなかつたため、一日金二〇〇円の割合による得べかりし利益合計金四万二六〇〇円を喪失した、と主張するが、原告が右農業の手伝によつて得べかりし利益が一日金二〇〇円であることを認めるに足りる証拠はないから、右主張は採用の限りでない。また、原告は、被告春代は昭和三〇年四月二三日原告の右損害賠償債務につき連帯保証したと主張し、証人加藤義勝はこれに副うよう供述し、甲第四号証にはこれに副う記載があるが、右各証拠は証人佐々木吉兵衛の証言に照らし信用できず他に右事実を認めるに足りる証拠はない(被告春代本人尋問の結果はこの点の証拠として不十分である。)。

よつて原告の請求は被告寿一に対し損害賠償として金一四万四〇〇七円の支払を求める限度において正当であるから右限度においてこれを認容し、被告寿一に対するその余の請求及び被告春代に対する請求はいずれも失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条を適用し、仮執行の宣言はこれを附さないことが相当であると認め、主文のとおり判決する。

(裁判官 滝川叡一)

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